読書録と自分のコト

読んだ本の感想と自分のことを書きます

GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代

著者について

アダム・グラント。1981年生まれ。ペンシルバニア大学ウォートン校の教授、組織心理学者。

GIVER, TAKER, MATCHER

この本では「GIVER(与える人)」「TAKER(受けとる人)」「MATCHER(バランスをとる人)」の3タイプの違いと、どのタイプが一番成功するかという話を、あらゆるタイプの事例と実証研究を用いて議論している。GIVERは他者の利益のために行動するタイプ、TAKERは自分の利益のために行動するタイプ、MATCHERは自分の利益と他者の利益を同じにしようとする(与えた場合は与えた分を得ようとし、得た分だけ与えようとする)タイプである。

GIVERのふるまい

タイトルの通り、結果から言うと成功者には圧倒的に「GIVER」が多いと言う。では、GIVERは具体的にどのようにふるまうのか。

時間をかけて「相手側の視点」を理解しようとする

TAKERは最初から自分の主張を押し付けるかもしれないが、GIVERはかなりの時間を費やして相手側の視点を理解しようとする。 とにかく質問をたくさんするため、「質問力」が求められる。そこではゆるいコミュニケーションが役に立つ。

控えめな言葉を使って話す

TAKERは強気な話し方をする傾向があり、独断的で率直であるが、GIVERには控えめな言葉を使って話す傾向がある。 具体的に言うと、「〜するのはどうかな?」「〜かもしれない」「たぶん」「どちらかといえば」のような、断言をしない強い主張を控えた言い方である。 控えめに話すことで、相手に譲歩する意思、もしくは少なくとも相手の意見を考慮する意思を伝えているのである。

アドバイスを求める

アドバイスを求めることもゆるいコミュニケーションの1つである。 誰かに何かを聞くことは、自分の自身のなさを伝え、弱さを見せることである。 自分のエゴを守ることにこだわらないGIVERは、純粋に他人から学びたいという思いでアドバイスを求める。 知識のある同僚に頻繁にアドバイスや助けを求めている人は、全く求めない人よりも上司の受けが良い、ということが調査でわかっている。 人にアドバイスを求めることには4つのメリットがあるという。情報の獲得、自分の身になってもらえること、相手とのかかわり合いが強められる、ゴマすり、である。

成功するGIVERになるためには

ただ、GIVERもただ無私無欲に与えていれば成功するわけではなく、特に性善説に基づき始めから他人を信用してTAKERに大損させられることもある。 GIVERはGIVERでも成功するGIVERになるためにはどうすればよいのか?

自己犠牲ではなく、他者志向

どんな人にも分け隔てなく、自分の時間を惜しみなく費やして他者の手助けをするとどうなるか。

例えば職場で、自分の仕事を二の次にして同僚や後輩の手助けばかりしたとする。その同僚がTAKERだった場合、自分がどんなに手助けをしていたとしても、手柄がすべて持っていかれてしまうこともあるだろう。クライアントに入れ込むあまり、要望を満たそうとあらゆる努力をした結果、「押しの強さがない」と評価されてしまうこともあるだろう。他人の手助けばかりして自分の仕事が疎かになってしまえば、自分の評価や生産性が危うくなってしまう。こうならないためにはどのように行動すれば良いのだろうか。

そこで「他者志向」という言葉がキーになる。相手に共感するのではなく、相手の視点で考えるのである。自分自身の利益を気にかけつつ、相手を信用し、相手の真意を必ず見極めることで、自分の利益まで損なうことを避けることができる。

TAKERと付き合うときにはMATHCERになれ

さて、GIVERが成功する上でTAKERに手柄を奪われてしまうことが起こりうることをすでに話したけれど、そもそもTAKERとのよい付き合い方はないのだろうか。

それは、MATCHERになることである。 最初はGIVERとして接し、それでも相手が明らかにTAKERとして行動したらGIVER、MATCHER、TAKERの3タイプを使い分けて臨機応変に戦略をとると良い。

ここでTAKERとの有効な接し方の関する良い戦略がある。「寛大なしっぺ返し」である。 寛大なしっぺ返しのルールは、「良い行いは決して忘れず、悪い行いを時々大目に見る」ことだが、もう少し具体的に説明すると、3回に2回は張り合い、1回は協力的な態度で応じる、ということだ。基本的にはMATCHERでありながら、3回に1度はTAKERに名誉挽回のチャンスを与えるのである。これこそ他者志向の戦略であり、信用することを基本としながら、TAKERに対してはGIVE & TAKEのやり方を使い分けるのである。

誰かの代理になることと関係説明

GIVERはMATCHERやTAKERSより控えめな要求をするので、有利とは言い難い結果に甘んじる結果になることがある。 他者の利益を尊重するあまり、自分の利益を主張することをためらってしまうからだ。 これを避けるためには、「他の人の代理人として振る舞う」ことと、「自分自身だけではなく、他者の利益も思いやった要求だと釈明する」ことが重要である。 他の人の代理人として振る舞う、というのは、家族やチームなど他者に対して大きな責任があると考えることだ。 GIVERは人を守りたいという気持ちがあるので、他人のためならNoと言いやすい。

また、自分自身だけではなく、他者の利益も思いやった要求だと釈明する、ということは「関係説明」と呼ばれている。 関係説明することで、GIVERは自分が単なる他人の代理人ではないと思うことができる。他の代理人として振る舞うことは、GIVERとしての自己イメージと社会的イメージを保つことに効果的なのである。

自分のコト

本書では上記にまとめたことよりも多くのこと学びが事例、実証研究を交えて書かれていました。 本を読む前、私はGIVERに対して、完全なる自己犠牲のイメージを抱いていました。自分の時間を惜しみなく他者に捧げる…確かにそういう人は素敵だけれど、良い人ってだいたい損をする役回りだよな…と。

以前アドラーの心理学の本を読みましたが、与えられたものに固執するのではなく、まず与えよ(他者貢献)、といった内容があり、かなりざっくりとした解釈ですが、与えれば信頼を得ていろいろと上手くいくといった具合に解釈していました。 半分くらい読み進めても、与えることでこれだけ成功している事例がある!という内容が大半だったため、とは言ってもGIVERだからこそ損をすることもあるよなーと思っていたのですが、後半になってGIVERはGIVERでも成功するGIVERになるための具体的な話が豊富になりました。

自分の話をすると、時と場合によって立場を変えていると思います。プライベートに関しては比較的GIVER寄り、かな。仕事に関しては競争意識が強くて、TAKERまではいかなくても強く主張するタイプだったかも。最近は自分の意見の主張が強すぎると自覚するようになり、意識して控えめな言葉を使うようにしています。また、以前はアドバイスを求めずに一人で抱え込むタイプだったのですが、今は積極的に他者に相談をするようになりました。それまであまり相談できなかった原因の1つとしては、自分の弱みを見せることにすごく臆病になっていたこともあり、今では何てことありませんが、他人に弱みを見せることが恥ずかしいことではないとようやく気づけたのだと思います。

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GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

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