モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書
著者について
尾原和啓(おばら かずひろ)。1970年生まれ。IT批評家・藤原投資顧問シニアアドバイザー。
「乾けない世代」
「乾いている世代」と「乾けない世代」
団塊世代より10年以上も上の人たちは、戦後の何もなかったころに、欲望と共に成功に向かって駆け抜けた。お金を稼ぎたい、広い家を建てたい、いいクルマを買いたい、きれいな女性を抱きたい、などの欲望への飢餓感と上昇志向と共に成り上がった「乾いている世代」である。
一方今の30代以下は、生まれた頃から何もかもが揃っていたので、物や地位などを欲して頑張ることはない。「ないもの」がないため、何かが欲しいと「乾けない」のである。彼らは上の世代のような出世や金銭的な成功のためだけに頑張れない。
5種類の幸せ
幸せは5種類に分けられる。「達成」「快楽」「良好な人間関係」「意味合い」「没頭」である。自分が何を幸せと感じるか分析してみると、自分自身のモチベーションを引き出す上で有効になるだろう。
達成
与えられた目標をクリアしたり、誰にもできなかったことを成し遂げたりするときに感じる幸せ。「乾いている世代」の幸せの源とされた。
快楽
ドーパミンを感じる幸せ。特に「乾いている世代」にとって、この物理的なポジティブ感情が「達成」に紐付きやすかった。
良好な人間関係
別に何も達成しなくてもいい、ただ自分の好きな人と笑顔で生きていければいい、という幸せ。人の幸せの基礎として捉えられている。
意味合い
自分のやっている仕事が、大きな文脈の中で誰かに貢献できている、自分の大切な人のためになっている、と実感できる幸せ。
没頭
プラモデルを組み立てるような細かな作業に集中しているときや、アクセサリー作りに夢中になっている時に感じる幸せ。
「乾けない世代」の幸せとは
上の世代では「達成」と「快楽」を追求する人が多かったが、「乾けない世代」は、「良好な人間関係」や「意味合い」を重視する人が非常に多い。仕事よりも、個人や友人との時間が大事。今自分がこの作業をやっている意味を見いだせないと、とたんにやる気が起きなくなる。「没頭」タイプの人も多く、「いくら稼げるか」よりも「仕事に夢中になって時間を忘れてしまった」ということに喜びを感じる。
偏愛こそが人間の価値になる
アイデアの次は「インサイト」
「ビジネスはアイデアが大事だ」とうたわれるようになって久しいが、今はユーザーの潜在的な欲求や購買意欲のツボである「インサイト(新しい視点)」をすくい上げる時代だ。残業ゼロ、週休3日して休みの間に街でユーザーを観察して「インサイト」を発見してくるという仕事を課す企業もある。1年中会社勤めするのではなく、まずは自分が生活者として生きることで、世の中の潜在的なニーズを拾ってきなさいという意図が込められている。
ライフワークバランスの時代
インサイトが重要視され、休日でもユーザー目線で観察する必要が出てくると、もはや仕事と休みの境界があやふやになってしまう。仕事と休みの境界がないと苦しいと感じる人は、自分の幸せと仕事が合っていないかもしれない。なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだ方が効果的である。これまでは「ワークライフバランス」の時代だったが、これからは「ライフワークバランス」の時代である。ワークの中のライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事なのである。
非効率な「好き」こそが次の産業
人工知能にも代替不可能なものが「嗜好性」である。これは、「私は誰になんと言われても、これが好きだ」という偏愛だ。人が頭で考えて答えを出せるようなものは、人工知能の方がより優れた答えを早く出せるようになるが、一方で人の嗜好性は非常に非効率なものである。これからは「他人から見れば非効率かもしれないけれど、私はどうしてもこれをやりたい」という、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていく。
異なる「強み」を掛け算する最強チームの作り方
変化の大きい時代で戦うために
変化の大きい時代では、過去の方法にとらわれず、どんどん戦い方を変えていくべきである。最前線にいる人が気づいたインサイトを、できるだけ早くアイデア化して、実現させていく臨機応変さが求められる。そのためにはメンバー全員がフラットにつながって、変化に気づいた人がサッと手を挙げられるような風通しの良さが必要である。そして、チームを編成するときは、プロジェクトに必要な強みを持ったメンバーや、自分にない強みを持つメンバーを補完してコラボレーションしていく。
強み、好きを知る
ストレングスファインダー
人の強みを34種類にパターン化させたものをもとに作られた診断テストである。
この結果をメンバー同士で共有し、自分の持っていない強みをコレクションしていくゲーム(自分にない強みコレクション)。
偏愛マップ
偏愛マップとは、ノートや画用紙にひたすら自分が好きなモノやコトを書き出していくコミュニケーションメソッドだ。好きな要素をどんどん細分化していき、細かく掘り下げていく。
自分のトリセツ
「ストレングスファインダー」や「偏愛マップ」より一歩先の、変化に強いチームを作る上での具体的な方法論。各自が自部のトリセツ(取扱説明書)を書く。内容は以下のようなもの。
1. この会社に入ろうと思った同期につながる、最も古い記憶について 2. 自分が120%頑張っちゃうこと、ときは? 3. 「これだけはダメ、嫌」 自分の取扱注意ポイントについて
この結果をメンバー間で交換し、説明をしたり質問したりすることで互いを理解する。
変化のスピードには「信頼」でしか追いつけない
違いを認め合うことと同じくらい重要なことが、「相手を信頼して任せる」ということである。メンバーがその時、その場でしかできないようなことを、それぞれが完遂してくれると信じ、任せきるようになるべきだ。変化の時代ではスピード勝負になるからだ。
WHYを共有していくマネジメント
チーム全員で「あなたはなぜここにいるのか」を問い、みんなの「WHY」が一人ひとりの「WHY」につながるように、対話を重ねて、成長を続けていく。変化の時代の中で、メンバーがそれぞれの強みに基づいて瞬発的に動いても、「WHY」をすり合わせさえすれば大きな方向はぶれない。
個人の働き方
好きを磨く
自分の「好き」や「生きがい」、仕事をする「意味合い」を突き詰めていく生き方を始めるには、自分だけの人生にエントリーしなければならない。「好き」のエッジが利いてくるほど、必ず気の合う仲間を呼び込んでいく。まずはアウトプットを目的とせずに、ただひたすら「没頭」することから始めると良い。
自立とは、依存先を増やすこと
変化の時代では、変化しないでいることの方がむしろリスクである。変化する時代を自由に、自立して生きていくことは、依存先を一ヶ所に絞らず、複数持つことが大事だ。
「好き」を「生きがい」に変えていく方法
(出典)
生きがいとは、上の図の「あなたが好きなもの」「世の中が必要としているもの」「対価を得るに値するもの」「あなたが得意なもの」の4点が交わるところに生み出される。「好き」が見つかると、自然とそれが「ライフワーク」になり、人生の中の「ライフワーク」のバランスが次第に増えていく。
ライスワークとライフワーク
自分が食べていく(家族を生かしていく)ためにやるべき仕事を「ライスワーク」と言う。「ライフワーク」の部分を広げていくには、まず自分の中で「ライスワーク」と「ライフワーク」を明確に使い分けることが大事である。「ライスワーク」を「ライフワークに自分が没頭でいるためのお金と時間とリソースを生み出すもの」と割り切り、平日はそれに集中してお金を稼ぐ。帰宅後や週末になったら切り替え、好きなことや得意なことに時間を投資し、磨いていく。そうしていくうちに「好き」が「得意」になり、「お金」になり、「世界が求めること」と合致した時、4つの点が重なり「生きがい」で稼げるようになる。「ライフワーク」での稼ぎが、「ライスワーク」に頼らなくてもよくなってきたころ、「生きがい」を追求して生きていく人生をスタートしていく。
自分のコト
最近仕事のモチベーションが上がらず、自分自身がお金稼ぎや出世のためにはあまり一生懸命になれないと思っていたところがタイトルと一致していたので読んでみました。結論から言うと、個人の働き方に関しては、「好き」なものを見つけてそれを仕事にしていこう、というまあそうだよねという内容でした。しかし、チームビルディングに関して、「強み」を理解して「信頼」し合うための具体的なコミュニケーションメソッドもあり、早速自分のチームで試してみたいと思えるようなこともありました。強みを理解する方法としてストレングスファインダーが紹介されていましたが、ちょうど今社内でも流行していたところなので、これを機に他の取り組みも試してみたいです。
さて、自分の好きなことについてですが、今まさに探しているところです…!昔から好奇心が強い割に、あらゆる分野に手を出してかつ飽きやすい性格のため、広く浅く学んで終わっているタイプで、守備範囲の広さ以外で秀でているものはそこまで…というのが自分の認識です。なので、最近は開き直ってそういう新しい分野に飛び込む好奇心を活かせるタイプの仕事をできたらいいなーと思っています。ものは捉えようですね。まあでもとりあえず偏愛マップはやってみようかな。
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モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)
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米原万里の「愛の法則」
著者について
米原万里(よねはら まり)。1950年東京生まれ。作家、エッセイスト。少女時代プラハのソビエト学校で学ぶ。ロシア語会議通訳として多方面で活躍。
愛の法則
なぜオスとメスがいるのか
生物界には、アメーバのように細胞分裂で殖えていく生き物もいれば、メスだけで単為生殖を繰り返す生物もいる。同じ個体が環境の変化によってオスになったりメスになったりする生物もいる。
キリスト教世界の、ヨーロッパ系の言語では、「人間」を表す言葉が「男」を表すのと同じ言葉を使っている場合が多い。 英語も同様に、「man」には「男」という意味と「人間」という意味がある。「woman」は人類の傍流のように思いがちだけれども、純正物学的に見ると女が本流である。メスが本流で、オスなしでも存続することができる。しかし、メスだけの生殖だと子供はメスの完全なコピーになる。コピーを繰り返していくと、遺伝子の情報がどんどん摩耗してコピーできなくなってしまう。オスがいることで、メス親とオス親の遺伝子がミックスされ、全く新しい形質の子供がつくられる。人類が進化して、変化するためにはオスが必要である。
メスは量を担いながら質を追求する、オスは量を追求しながら質を担う
メスが多いと次の世代が量的に多くなり、オスが多いと次の世代の質的変化の幅が大きくなる。オスがなるべく多くのメスと交わって次の世代に自分の遺伝子を継承する個体の量を多くしようとする一方、メスはなるべく優秀なオスを見つけて優秀なオスと交わろうとする。つまり、オスは量を追求しながら自分自身では質を担い、メスは量を担っていながら質を追求していて、オスとメスとでは完全に分業されている。
オスはサンプル説
オスは環境の激変のあった時にたくさん死んで、たくさん生まれる。有事の際に適応できるタイプだけが遺伝形質を伝えることができる。その環境の変化はどのように母体に伝わるのか。決定的なことはまだ分かっていないが、一説では栄養過多の場合女の子が生まれ、栄養が行き届かないと男の子が生まれるらしい(栄養素の割合はタンパク質が関係しているとか)。オスの方が種として多様性がある。種としてはみんな同じになると、激変が起こった時にみんな滅びてしまうので、好みの偏在は種の生存のための保険のようなものである。
国際化とグローバリゼーションのあいだ
「国際化」と「グローバリゼーション」の溝
日本語では「国際的」と言う時と「国際化」と言う時に、同じ「国際」という言葉を使っている。英語では「国際的」にはインターナショナルという言葉を使うが、「国際化」はインターナショナリゼーションとは言わない。辞書では、インターナショナリゼーションは「国際共同統治化」という意味と記されている。では日本語で言うところの「国際化」はどう訳すかというと、辞書ではグローバリゼーションあるいはグローバライゼーションと訳している。
日本人が「国際化」と言う時には、国際習慣に合わせる―グローバルスタンダードとよく言われる世界標準に合わせるという意味で使われている。しかしグローバリゼーションというのは、イギリスやアメリカが、自分たちの基準で、自分たちの標準で世界を覆い尽くそうという意味なのである。
日本にとって、その時々の世界最強の国が世界
世界に自分たちを合わせなくてはいけない、と日本が考える時の世界とは、その時点での世界最強の国である。何を基準に最強と見なすかというと、基本的には軍事力と経済力だけを見て、文化を見ない。
英語偏重のはらむ危険
外国語を学ぶと、普段日本語でものを見たり考えたりする時にあった常識がひっくり返るため、自然に批判精神や複眼志向が身につく。しかし、英語の同時通訳者はその力が非常に弱い。
第一の原因は、日本があまりに英語一辺倒な社会のため、英語を同時通訳できるぐらいまで学ぶ人が多く、その競争の中で生き抜いて採用されていく人はどうしても優等生タイプになってしまうからである。
第二は、英語しかできないので、英語の情報をつい入れてしまうからである。
第三は、外国語を学ぶと必ずかかる病気というものがある。学んだ外国語、外国文化を絶対化するという病気、もう1つは逆に日本の方が優れていると自国と自国文化を絶対化する病気である。この病気を克服するためには第3の言語を身につけると良い。それによって初めて、第一外国語を突き放して冷静に見ることができるのである。
6000もの言語も実は10ほどの大家族
世界には6000ほどの言語が存在するけれども、それらは親戚関係で10くらいの家族に分けることができる。これは発音や文法の類似で分類されている。日本語はおそらくウラル・アルタイ語族と太平洋南部のポリネシア語族が合体して、ミックスしてできた言語だと言われている。
またもう1つ別な方法で分類すると、3つに分けることができる。これは単語をどのようにして1つの文章にまとめるか、ということに注目している。こうすると、孤立語、膠着語、屈折語のどれかに分類される。
孤立語
英語と中国語、あるいはヴェトナム語など。動詞が全く活用せずに、文章中の単語の役割が語順によって決まる。語順にとても厳しい代わりに、言葉はあまり語形変化しないし、助詞もない。
膠着語
日本語やハンガリー語、トルコ語など。1つの言葉に他の品詞が付け足されてくっつく。膠着語は「て・に・を・は」が語尾につくことで文中の言葉の役割が決まるため、あまり言葉そのものは変化しない。単語の文中における役割は「て・に・を・は」によって決まるので、述語の手前の語順は自由自在である。
屈折語
ロシア語やフランス語など。言葉の文中における役割が言葉の語尾や語頭、言葉の変化、屈折によって決まる。相対的に語順は自由になるが、代わりに語尾変化や人称変化など、屈折の法則を覚えるのに苦労する。
第3の言語を選ぶ時、日本語が膠着語で英語が孤立語なので、屈折語を学ぶと脳みそがやわらかくなる。
理解と誤解のあいだ
通訳のプロセス
通訳は時間との戦いである。いい訳を選ぶために考えたり調べたりしている時間がないため、事前にできるだけ自分の頭の中の辞書を豊かにしておく必要がある。様々な単語や文型、表現を日頃から大量に記憶して定着させておかなければならず、それらが必要な時に瞬時に出てくるような半永久的な記憶力が必要である。またさらに重要なのが、瞬時の記憶力である。限られた時間の中で訳し終えるまでのメッセージを忘れないようにする必要があるからである。
同時通訳のテクニック
大事なのは発信者の言いたいことをいかに伝えるか、である。伝える情報量を変えることなく、シンプルな形に省略していく(枕詞や前後の文脈などから明らかなものを排除していく)。
通訳と翻訳の違い
小説を楽しめる語学力があれば通訳になれる
その外国語と日本語と、両方で小説を楽しめるくらいの語学力があれば通訳になることは簡単だ。辞書を引かずに本を読み通すことが効果的である。いちいち辞書を引くと興味が薄れて、途中で挫折してしまう。わからない単語は前後関係や言葉の構成要素で理解していく。安易に辞書を引くと、その言葉に対する関心度が低いためなかなか覚えられないが、たぶんこういう意味だと推測して、読み終わったあとに辞書を引いて当たっていたとなると心に残る。生きた言葉を身につけるためには、読書が最適な学習法である。
自分のコト
まとめではいくらか端折っているけれども、生物学的な話、国際化の話、言語の話、通訳の話と盛りだくさんなエッセイでした! オスはサンプルという説は結構興味深かったですね。とにかく多種多様なサンプルを用意して、強い遺伝子だけが次の世代に引き継がれていく…といったところでしょうか。国際化の話に関しては、かなり頷けるところが多かったです。日本は長い歴史を見ても、中国、オランダ、アメリカなどその時代に一番強い!と思った国の文化を真っ先に取り入れていますね。
言語の話をすると、6000もの言語を3タイプに分類する話がありましたが、幸運なことに、私は日本語、英語以外にイタリア語をある程度学んでいます(イタリア語を学んだのはイタリア(の料理や建築や雰囲気)が好きだという単純な理由からです…!)。批判精神や複眼志向が身についているといいのですが…!私は言語を学ぶ時、文化も合わせて学びます。特にスラングが好きで、英語だとアメリカやイギリスのドラマを見たりします。イタリア語に関しては、短期留学で滞在したことがあります。現地の人と話すとスラングを聞くこともあるわけですが(たいてい悪口などの汚い言葉ですがw)、そういう時はこれは英語や日本語には訳せないなーということも多いと思います。海外旅行でもなるべく英語ではなくその国の言語、文化をある程度学んだ状態で臨むように心がけていますが、本当の意味での国際化はそういった心がけから始まるのかもしれません。
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GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
著者について
アダム・グラント。1981年生まれ。ペンシルバニア大学ウォートン校の教授、組織心理学者。
GIVER, TAKER, MATCHER
この本では「GIVER(与える人)」「TAKER(受けとる人)」「MATCHER(バランスをとる人)」の3タイプの違いと、どのタイプが一番成功するかという話を、あらゆるタイプの事例と実証研究を用いて議論している。GIVERは他者の利益のために行動するタイプ、TAKERは自分の利益のために行動するタイプ、MATCHERは自分の利益と他者の利益を同じにしようとする(与えた場合は与えた分を得ようとし、得た分だけ与えようとする)タイプである。
GIVERのふるまい
タイトルの通り、結果から言うと成功者には圧倒的に「GIVER」が多いと言う。では、GIVERは具体的にどのようにふるまうのか。
時間をかけて「相手側の視点」を理解しようとする
TAKERは最初から自分の主張を押し付けるかもしれないが、GIVERはかなりの時間を費やして相手側の視点を理解しようとする。 とにかく質問をたくさんするため、「質問力」が求められる。そこではゆるいコミュニケーションが役に立つ。
控えめな言葉を使って話す
TAKERは強気な話し方をする傾向があり、独断的で率直であるが、GIVERには控えめな言葉を使って話す傾向がある。 具体的に言うと、「〜するのはどうかな?」「〜かもしれない」「たぶん」「どちらかといえば」のような、断言をしない強い主張を控えた言い方である。 控えめに話すことで、相手に譲歩する意思、もしくは少なくとも相手の意見を考慮する意思を伝えているのである。
アドバイスを求める
アドバイスを求めることもゆるいコミュニケーションの1つである。 誰かに何かを聞くことは、自分の自身のなさを伝え、弱さを見せることである。 自分のエゴを守ることにこだわらないGIVERは、純粋に他人から学びたいという思いでアドバイスを求める。 知識のある同僚に頻繁にアドバイスや助けを求めている人は、全く求めない人よりも上司の受けが良い、ということが調査でわかっている。 人にアドバイスを求めることには4つのメリットがあるという。情報の獲得、自分の身になってもらえること、相手とのかかわり合いが強められる、ゴマすり、である。
成功するGIVERになるためには
ただ、GIVERもただ無私無欲に与えていれば成功するわけではなく、特に性善説に基づき始めから他人を信用してTAKERに大損させられることもある。 GIVERはGIVERでも成功するGIVERになるためにはどうすればよいのか?
自己犠牲ではなく、他者志向
どんな人にも分け隔てなく、自分の時間を惜しみなく費やして他者の手助けをするとどうなるか。
例えば職場で、自分の仕事を二の次にして同僚や後輩の手助けばかりしたとする。その同僚がTAKERだった場合、自分がどんなに手助けをしていたとしても、手柄がすべて持っていかれてしまうこともあるだろう。クライアントに入れ込むあまり、要望を満たそうとあらゆる努力をした結果、「押しの強さがない」と評価されてしまうこともあるだろう。他人の手助けばかりして自分の仕事が疎かになってしまえば、自分の評価や生産性が危うくなってしまう。こうならないためにはどのように行動すれば良いのだろうか。
そこで「他者志向」という言葉がキーになる。相手に共感するのではなく、相手の視点で考えるのである。自分自身の利益を気にかけつつ、相手を信用し、相手の真意を必ず見極めることで、自分の利益まで損なうことを避けることができる。
TAKERと付き合うときにはMATHCERになれ
さて、GIVERが成功する上でTAKERに手柄を奪われてしまうことが起こりうることをすでに話したけれど、そもそもTAKERとのよい付き合い方はないのだろうか。
それは、MATCHERになることである。 最初はGIVERとして接し、それでも相手が明らかにTAKERとして行動したらGIVER、MATCHER、TAKERの3タイプを使い分けて臨機応変に戦略をとると良い。
ここでTAKERとの有効な接し方の関する良い戦略がある。「寛大なしっぺ返し」である。 寛大なしっぺ返しのルールは、「良い行いは決して忘れず、悪い行いを時々大目に見る」ことだが、もう少し具体的に説明すると、3回に2回は張り合い、1回は協力的な態度で応じる、ということだ。基本的にはMATCHERでありながら、3回に1度はTAKERに名誉挽回のチャンスを与えるのである。これこそ他者志向の戦略であり、信用することを基本としながら、TAKERに対してはGIVE & TAKEのやり方を使い分けるのである。
誰かの代理になることと関係説明
GIVERはMATCHERやTAKERSより控えめな要求をするので、有利とは言い難い結果に甘んじる結果になることがある。 他者の利益を尊重するあまり、自分の利益を主張することをためらってしまうからだ。 これを避けるためには、「他の人の代理人として振る舞う」ことと、「自分自身だけではなく、他者の利益も思いやった要求だと釈明する」ことが重要である。 他の人の代理人として振る舞う、というのは、家族やチームなど他者に対して大きな責任があると考えることだ。 GIVERは人を守りたいという気持ちがあるので、他人のためならNoと言いやすい。
また、自分自身だけではなく、他者の利益も思いやった要求だと釈明する、ということは「関係説明」と呼ばれている。 関係説明することで、GIVERは自分が単なる他人の代理人ではないと思うことができる。他の代理人として振る舞うことは、GIVERとしての自己イメージと社会的イメージを保つことに効果的なのである。
自分のコト
本書では上記にまとめたことよりも多くのこと学びが事例、実証研究を交えて書かれていました。 本を読む前、私はGIVERに対して、完全なる自己犠牲のイメージを抱いていました。自分の時間を惜しみなく他者に捧げる…確かにそういう人は素敵だけれど、良い人ってだいたい損をする役回りだよな…と。
以前アドラーの心理学の本を読みましたが、与えられたものに固執するのではなく、まず与えよ(他者貢献)、といった内容があり、かなりざっくりとした解釈ですが、与えれば信頼を得ていろいろと上手くいくといった具合に解釈していました。 半分くらい読み進めても、与えることでこれだけ成功している事例がある!という内容が大半だったため、とは言ってもGIVERだからこそ損をすることもあるよなーと思っていたのですが、後半になってGIVERはGIVERでも成功するGIVERになるための具体的な話が豊富になりました。
自分の話をすると、時と場合によって立場を変えていると思います。プライベートに関しては比較的GIVER寄り、かな。仕事に関しては競争意識が強くて、TAKERまではいかなくても強く主張するタイプだったかも。最近は自分の意見の主張が強すぎると自覚するようになり、意識して控えめな言葉を使うようにしています。また、以前はアドバイスを求めずに一人で抱え込むタイプだったのですが、今は積極的に他者に相談をするようになりました。それまであまり相談できなかった原因の1つとしては、自分の弱みを見せることにすごく臆病になっていたこともあり、今では何てことありませんが、他人に弱みを見せることが恥ずかしいことではないとようやく気づけたのだと思います。
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GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代 (単行本)
- 作者: アダムグラント,楠木建
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2014/01/10
- メディア: ハードカバー
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